2016.6.27
人事の仕事=永遠に解けない知恵の輪(2016.06.21)

ずっとITやネットビジネスに携わっていた自分が、
どうしていまは人事の仕事をしているのか。

たまに聞かれることがありますが、
「なりゆき」でなった部分もありますし、
一方で自分できちんと選んだ部分もあります。
ただ、ここで選んだことや理由が、
私の仕事観を決定づけているように思うので、
皆さんと接する機会の参考に、まとめておきます。

まず、私がフリーランスのコンサルタントだった頃、
ある会社の人事部でシステム導入の話がなければ、
私がこの仕事に携わることは全くなかったでしょう。

それまで人事という仕事には、何の興味もなかったのですが、
システムを入れるからには、勉強するしかありません。
正直言って、この頃は本当に勉強しながらの日々でした...。
社会保険料の内訳も、この時初めて知ったほどだったので。

ただ、それよりも何よりも勉強になったのは、
このお客様のトップである人事本部長のスタンスでした。
この本部長は、前職の総合商社で長年センスを培われており、
それは、リクルート社やベンチャーで過ごしてきた自分とは、
およそ対極にある考え方で、まさに目から鱗が落ちました。

この後、制度改革までお手伝いすることになり、
賃金制度を変えるため、当然指標も変わりますから、
賃金が下がる従業員も出てくることが懸念されました。

ほとんどのベンチャーや競争主義の会社であれば、
「そんなのは本人の責任」で終わるのかもしれません。
しかし、本部長はそのやり方を明確に否定しました。
「いや、全員に理解を求める。最後まで誠意を尽くすんだ」

全員を見捨てない。ひとりも邪険にするな。
この首尾一貫されたポリシーは、私の胸に突き刺さった。
他にもいろんな場面で、似たようなご意見を伺いました。

もちろん、実際にはそんなことは難しいわけで、
1つの制度で、満足できる従業員の割合には限りがある。
でもだからこそ、不満がある従業員は必ずいて、
そして周囲にも、確実にその事実は伝わります。
すると、「会社はそういうことをするんだな」と思う。
「いつか私もそうなるんだ」と誰もが不安になるのです。

実は、そこから先こそが人事の仕事であって、
不満の理由を聞いたり、できるだけ便宜を図ったり、
さまざまなレアケースにきめ細かに対応することが、
みんなが楽しく働くためには、一番大事なんだ。

99%が満足する制度でも、人事の仕事としては及第点。
その先にある本物を目指して、日夜現場を飛び回り、
不満の種を探し、愚痴を聞いて、改善策をまとめていき、
「いいじゃん、そんな話」で済ませてしまいがちな経営に、
「いや、こういうことでも大事です」と立ち向かうことが、
人事の仕事であって、制度はそのための道具に過ぎないのです。

この事実に、はたと気づいたとき、
「これは、答えがない仕事だなあ」と実感しました。
日々変わっていく組織や人々に、100%の答えを目指して、
現場を回って、制度を変えても、答えなんて出るわけがない。

するとなぜか私は、がぜんやる気が出てきたのです。
これこそ、自分が求めていた仕事だったのではないか。
それまで、マーケティングも事業企画もPMもコンサルも、
論理を積み上げれば解が導かれ、だいたい結果は出てくるので、
それはもちろん楽しいものの、どこかで何かが足りなかった。
これを何度も繰り返すのが、仕事の本質なのかなあ、と。

しかし、人事は幸か不幸か、何をやっても答えがありません。
どんなに手を尽くしても、必ず予想外のことが起きてくる。
そこに過去の理屈や理論は通用せず、答えは自分で探すしかない。

しかもその答えによって、確実に誰かが喜んでくれる仕事なのです。
この永遠に解けない知恵の輪は、いまも私の頭を悩ませていますが、
そんな理由で、私には天職が見つかったような気がしています。
それがヘッドハンターへとつながる話は、いずれまた。