2016.4.26
転職すれば、年収は下がる、本当は。(2016.04.26)

巷の広告を眺めていると、時として、
「転職によってどれだけ年収が上がったか」
ということが書かれているのを見かけます。

この仕事をしている身としては、
「転職=キャリアアップ=年収アップ」のように、
語られてしまうことは、残念な気分が否めません。
もちろんそういうケースもありますが、
一般論としては、そんなことはありえないからです。

まず、自分の給料を会社がなぜ払ってくれるのか、
そこから考えてみてください。
会社の利益に、自分が貢献しているからですよね。
貢献できるのは、自分自身のスキルももちろんですが、
そこには長い年月で、積み重ねられた部分があります。

入社してから、ずっとその会社にいることで、
会社全体に対する理解が上がりますし、
何より他の従業員とのチームワークが、
一般的には上がっているのも大きな価値です。

そこに認められる価値も含めて、
会社が自分に給料を払ってくれていることを、
いつも忘れないようにしたいものだと思います。

そして、そうです、転職するとその部分の価値は、
全くのゼロに戻ってしまうのが基本なのです。
何も知らない会社で、誰も知らない組織に入り、
「同じ仕事をしている」から同じ給料になる、
というのは、見えない部分の貢献を考えると、
実際にはちょっと違ってしまうのが現実です。
それは理不尽でも何でもなく、極めて合理的な結果です。

それでも、前の年収が保障されて転職できるのなら、
それは転職先による期待と配慮だと考えるべきでしょう。
「この人は、キャッチアップの期間はあるけれども、
 きっとほどなくして、いまの年収と同じ成果を挙げるはず」
という想いが、その年収には込められていると考えられます。
もちろん、報酬には生活保障の意味があり、その担保でもありますが。

にもかかわらず、冒頭のような広告が出ると、
何かを勘違いされてしまいそうで、
この仕事をしている身としては本当に残念です。
転職は、年収を上げるチャンスとは、本来ほど遠いものなのですから。

しかしあるとき、外国の有名大学でMBAをとった方が、
喜び勇んで転職先の紹介を求めてお見えになったのですが、
この「年収が落ちる」原則を説明したところ、
大変お怒りで帰られたことをいまでも憶えています。
理屈を理解すれば、年収が2倍になることはないと分かるように思いますが...。

もちろん、年収が上がるケースもいくつもあります。
それは下記の2つのケースが主になります。

・不当な評価をしている会社にいる
 これは本当にいたたまれないケースです。
 その会社がきちんと価値を評価していない場合、
 もちろん、ちゃんとしている評価の会社に移ると、
 年収はそれだけでも上がります。これはHappy Story。

・市場での自分のスキルのニーズが高い
 もう1つが、自分のスキルが市場で求められている場合。
 これがくせ者で、よし!と転職して年収アップを喜んでいると、
 ある日突然、市況が反転して年収を社内で下げられた上に、
 その時には転職先がなく、生活水準も下げられず、
 苦境に陥ってしまうので、たちが悪いです。

皆さんも転職を考えるにあたり、
どうしても年収は考えるところでしょう。
生活水準は下げられないが、新たなチャレンジもしたい。
ヘッドハンターもこの時、一緒になって悩みます。

この時に、提示された条件が現状維持であれば、
そのこと自体にも相手側の期待を感じるべきであり、
前向きに考えてみて欲しいと思いますし、
その期待を踏まえて、一刻も早く成果を出し、
どんどん良い条件を引き出して欲しいと心から願います。

一方、上がる場合はむしろ、事情をよく考えるべきでしょう。
一度、報酬が上がると生活水準が上がってしまうので、
これを下げるのは、本当に容易なことではありません。
「なぜ、そこまでして自分をとるのか」訊ねてみるべきだと思います。

とはいえ人々から注目を浴びたい人材会社は、
明日も転職で年収UP!と謳っているでしょうが...。